昼のお好み焼きと夜の鉄板居酒屋、二つの顔を使い分ける店
広島市西区・井口エリアで営業する鉄板にいちは、ランチとディナーでまったく異なる業態に切り替わる。昼間は職人が一枚ずつ焼き上げるお好み焼きの専門店として稼働し、夜になると鉄板焼きや一品料理にアルコールが加わった居酒屋スタイルへ移行する。焼酎のボトルキープにも対応しているため、仕事帰りに自分のボトルで一杯という使い方をする常連も少なくないらしい。時間帯で客層もメニュー構成もがらりと変わるこの仕組みが、一軒で二度おいしい店として地元で親しまれている理由だろう。
広電井口駅・JR新井口駅いずれからも徒歩約6分とアクセスしやすく、専用駐車場2台分に加えて近隣にコインパーキングもある。個人的には、駅からの距離感がちょうどよく、住宅街のなかにぽつんと現れる店構えに妙な安心感を覚えた。カウンター席・テーブル席・掘りごたつ式座敷と三種類の席を用意しており、一人でもグループでも居場所に困らない。10名以上の貸切宴会にも対応しているため、地元の集まりや歓送迎会の会場として名前が挙がることも多いという。
厚い鉄板でキャベツの甘みを引き出す焼き方
鉄板にいちのお好み焼きは、分厚い鉄板の上で素材をじっくり蒸し焼きにする工程がカギになっている。この手法によってキャベツが持つ水分と甘みが逃げず、最後のひと口まで熱々の状態で食べられる。唐辛子やカレーパウダーなど調味料の種類が豊富で、客が自分の好きな味に仕上げていくスタイルを取っている。「お好み焼きはお好みの味で」という店の考え方が、卓上の調味料ラインナップにそのまま反映されている形だ。
看板メニュー「にいちスペシャル」はトッピングを全部乗せした贅沢な一枚で、初めて来た人がとりあえず頼む定番になっているという声が目立つ。一方、210円からオーダーできる小鉢の「にいちメニュー」は、もう少し何か欲しいときにちょうどいいサイズ感。お好み焼き一枚では物足りないが定食ほどは要らない、そんな微妙な空腹具合にぴたりとはまる。常連の間では小鉢を2〜3品並べて晩酌セットにする使い方が定着しつつあるようだ。
飲食店の少ないエリアに交流の場をつくりたいという動機
鉄板にいちの店主は生まれも育ちも井口で、地元に飲食店が少ないことをずっと気にかけていたという。開業の出発点は、近所で気軽に集まれる場所をつくりたいという率直な思いだった。食事を介して住民同士が顔を合わせる機会が増えれば、地域のつながりも自然に太くなる。そうした考えのもと、特別な日だけでなく普段の夕飯や昼食の選択肢として根づくことを目指して日々営業を重ねている。
「地元に帰ってきたら、まずはうちへ」という店主の言葉は、この店が目指す立ち位置をよく表している。実際、進学や就職で井口を離れた人が帰省のたびに顔を出すケースもあるらしく、同窓会のような空気が生まれる夜もあるとのこと。老若男女が入り混じる客層は、鉄板にいちが世代を超えた接点になっていることの証左だろう。こうした日常の延長線上にある飲食店は、チェーン店にはなかなか真似しにくい。
テイクアウト対応で店外でも専門店の味を
店内での食事だけでなく、鉄板にいちではお好み焼きのテイクアウトにも対応している。職人が店内と同じ工程で焼き上げた一枚を持ち帰れるため、自宅や職場でも出来たてに近い状態で味わえる。仕事の休憩時間が短い日や、小さな子どもがいて外食が難しいタイミングなど、事情はさまざまだが「店の味をそのまま持って帰れる」という選択肢があるのは助かるという声をよく聞く。
5,500円以上のコース利用時には貸切宴会も受け付けており、幹事側の段取りとしては席の心配がいらない点が好評のようだ。掘りごたつ式座敷なら靴を脱いでくつろげるし、鉄板を囲みながらの宴会は話のきっかけにも困らない。鉄板にいちは「食べる場所」と「持ち帰る選択肢」の両方を揃えることで、使い勝手の幅を広げている。予約や持ち帰りの相談は電話で直接やり取りする形式を取っている。


